今年の春先、来年に就職活動を控えた大学生が私のオフィスを訪れた。彼女は日本の大学生でイギリスに留学して英語と心理学を学んで帰国、日本でどんな風に就職すればよいかのアドバイスを求めているのだという。私の古巣の広告業界にも興味があるということで業界の変遷と今後について私見を伝えた。おそらく役に立つでしょう。いい話が聞けてよかったね、彼女。(笑)
イギリスで同じ年代の人たちと日本で人気のある会社などという話題になった際、彼女はBankを挙げたのだという。その際の各国の友人たちの怪訝な表情について彼女は話していた。欧州でBankは社会的に斜陽産業として認知されていること、そして大きな企業ではなく、小さくても自分の専門性が活かせる企業に勤める方がCoolとされていること、日本の企業と就職活動に違和感を感じていること、などなど、彼女は堰を切ったように話した。その違和感、本物だよ。君は間違っていない。
彼女が外資系を検討していると話すと多くの大人は訳知り顔で「まずは日本の企業に入った方がいい」とアドバイスするのだと言う。私は笑止千万だと思う。おそらく日本にいて日本の企業に入るべきなんて言っている人の会社、来年から外資になるかも知れないし。半年後にはインド人の上司が来るかも知れないし。2020を契機として、日本のOSのかなりの部分はグローバルと共通化されるだろう。PCやスマホなどと同じ文脈だ。いまはそういう時代だということを強く自覚する必要があると思う。そしてそうした前提のもとに自らのキャリアを構成していくべきなのだ。イギリスで勉強して英語で仕事ができるのであれば、英語で仕事を続けるべきだ。マーケティングにせよ、広告にせよ、日本語の市場は極めて小さい。より大きな市場に向かうべきなのは自明である。
日産やスバルが無資格者の点検問題でやり玉に挙げられているが、出荷停止は国内だけ。つまり問題となっている点検制度は国土交通省による超ドメなある種の規制に過ぎない。世界中探しても日本以外に誰も行っていないような点検を問題にするなど愚の骨頂。むしろ国土交通省が企業の足かせとなっている好例と言えるだろう。それを取り上げて、日本のものづくりの危機みたいに喧伝するテレビや新聞のバカさ加減にも呆れる。
先日の雨中の情報交換会では、中国のスマートペイメントの普及とITをフル活用した流通革命、急激な評価経済の浸透による高モラル社会へのシフト、透明性の向上による二重経済の希薄化、ベンチャー投資による利益創出への流れ、学生のアイデアによるシェアリングビジネスなどへの国家的な資金投入と世界戦略による早期の回収など多くの示唆を得ることができた。中国を食の安全が確保されていない国程度に理解していたのでは完全に判断を間違う。
中国もしかり、欧州やASEANもしかり、周囲をよく見える目とよく聴ける耳を持つことがすごく大事だと改めて思う。自分の思考の整理もできた。若い訪問者の彼女に感謝。